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  「岸和田駅前ミュージシャン」 Vol.3
歯 黒  猛 夫 
 

 ちょうど去年の今ごろ、岸和田駅前でギターを鳴らし歌っている二人を取材したことがある。仮にKクンとNクンとしておこう。二人はプロを目指していて、そのために仕事も辞め、フリーターをしているといっていた。路上で歌い出したのはより多くの人に自分たちの歌を聞いて欲しいから。そして、チャンスがより多く、自分たちの前を通ってくれるように願っているからだ。
 ここまでは良くあるパターン。
 彼ら二人の話を聞いていて驚いたのはKクンはアコースティックなデュオ以外にエレキメインのバンドも組んでいて、もし、バンドの方が業界関係者の目にとまればそっちでデビューを果たしたいという。片やNクンの方はこの方法オンリー。つまり、もしもKクンがバンドデビューということにでもなれば、Nクンは一人取り残されてしまうことになる。そんな、冷たいとも思える間柄を二人は淡々と話してくれた。
 友達となれば何でもかんでも一緒という考え方は確かにおかしい。趣味や目的に応じた間柄があって当然だし、何をするにもいつも一緒なんて息苦しい、気味が悪い。だから、彼ら二人の考え方は否定しない。
 じゃあ、友情って一体なんだろうということになる。
 数ある社会的関係の中で友情ほどあいまいなものはない。親子、兄弟は血と戸籍で繋がっている。結婚は一種の契約だから法的な義務も権利も生じてくる。恋人どうしでも同じようなものだ。誕生日、クリスマス、バレンタインデーには一緒に過ごし、他の誰かとややこしいことになれば浮気だ何だと攻め立てることができる。つまり、友情なんてものは一方的な思い入れのみで成立する不確かなものなのだ。自分がどんなに大切だと思っていても相手がそっぽを向けばそれで終わり。深入りすれば裏切りが生じるときもあるし、時には財産を奪われるときもある(連帯保証人とかでね)。
 だから、無理に友だちなんて作る必要はないように思う。言い換えれば、友だち関係は出来あがるものであって、作り上げられるものではないとも思う。無ければ無いで気楽だし、あればあるで便利な代物。そのくらいの気持ちで受け止めていれば、束縛も落胆も生ずることはない。趣味や趣向や価値観が違えども、自然体の自分と波長が合って仲良く出来そうな相手を友だちと思う。それ以上を求める必要はないし、求められる必要もない。「友だちやから」、「友だちやのに」という発言は恩着せがましい大きなお世話でしかないのだ。 
 だから僕は「友だちになろうな」とすぐに言う人間を信用しない。大した付き合いでもないのに「俺たちは親友だよな」とか言われた時には次の日から会いたくなくなる。友人と呼べるかどうか見極めるのは自分自身であって、無理に友情を押しつけられるのは迷惑だ。これから僕に接する機会がある人は気をつけてください。
 インタビュー取材から一年。冬の凛とした空気に響いていたKクンとNクンの歌はもう聞こえない。二人がデビューしたという噂も聞かないし別の場所で見かけることもない。相変わらず同じ夢を追いかけているのか、それとも違う夢に向かって邁進しているのか。もう一度会って話を聞きたい。

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