泉州の水なす
なすの原産地はインドといわれていますが、日本で栽培された年代は不明で、記録としては、奈良時代の書物『東大寺正倉院方書』になすを献上したという記録がありますので、少なくとも1,200年以上前には栽培されて食べていたことになります。
なすは栽培の歴史が非常に古いため、古くから独自の品種が分化・発達し、このため、その栽培されている土地に合うよう何種類もの品種が生まれたと思われます。有名な品種は京都の「賀茂なす」をはじめ、有名な物だけで100種類以上になります。
水なすもそういった地方品種の一つで、泉州地域特有の品種です。泉州の気候風土や食習慣、生活実態に対応して育成されたものと思われ、江戸時代初期には栽培されていたと伝えられています。
その由来ははっきりとわかっていませんが、室町時代の書物に水なすの元になったと思われる「澤茄子」の記述があり、貝塚市沢周辺が発祥の地ではないかと考えられていますが、他の説では、泉佐野市に残る、「日根野あずきに上之郷なす」の諺から、泉佐野市上之郷周辺とも言われています。
絶対ここが発祥地というのは、まだまだ調べなくてはいけないかもしれませんが、泉州地方であることに間違いはなさそうです。
水なすは他のなすに比べてその名の通り水分が多くて柔らかく、あくが少なく独特の甘みを持つため、生でも食べられます。このため、昔は田畑の片隅に植え、炎天下の農作業でのどが渇いたときに食べて、渇きを癒したともいわれています。
水なすは皮が非常に柔らかく、軽く塩もみしぬか漬けにすると、翌朝には鮮やかな紫色に漬けあがり、とてもおいしく召し上がれます。消費は堺市以南が中心ですが最近、テレビ、新聞、雑誌などに紹介されたことで全国的に知名度が上がり需要が伸びてきています。
これからも地域の特産野菜の一つとして、ますます注目を集めることでしょう。 |